歩行訓練   ゆざわひろみ
    公開 2019年01月27日

 肢体不自由児の不自由な身体を少しでも改善するためには、運動療法と言われる治療手技を施すこととなります。
 その中でも歩行訓練は、四つ這いやいざり這いを習得した子どもが、更に高度の移動手段を獲るために練習する訓練です。
 歩行訓練のLS-CC松葉杖訓練法については、ヘルス出版社発行の教本「立つ・歩くことを考えた 脳性まひ児のリハビリテーション (−運動機能獲得へのアプローチ−)」を参考にしてください。
 歩行と称される移動法には、歩行器歩行、杖歩行、介助歩行、独歩などがあります。
 LS-CC松葉杖訓練法では、歩行を杖歩行と独歩に限って歩行と言っています。
 時に介助歩行で終了となることもありますが、この終了は本意ではないのです。
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 立位から歩行に至るためには、運動機能訓練時からの立位の練習に取り組んでいなければ達成できないのかも知れません。
 立位や歩行は、身体と地球の重力との関係に大いに影響されます。
 立位や歩行を獲得するためには、地球上の重力を無視したり軽視しての訓練では獲得できません。
 絶体に有ってはならないのが、身体の重心が垂直から後方になることです。
 LS-CC松葉杖訓練法では、歩行訓練は松葉杖での練習から入ります。
 松葉杖を使って立ち歩くことを学びますが、松葉杖を使用することによって身体の重心は垂直から前方となります。
 知的障害などで歩行訓練を歩行器から始めることもありますが、麻痺児と知的障害児では体幹のバランス感覚に大きく差が有るからです。麻痺児にはバランス感覚が多少なりにも劣ることがありますが、知的障害児にはバランス感覚の障害が少ないからです。
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 身体の重心???
 「身体の重心を垂直から前方に保つ」とは、意味が理解されにくいようなので説明させていただきます。
 私たちが立位を保つためには、足の裏の踵部・親指のつけ根のふくらみ(母指球)・小指のつけ根のふくらみ(小指球)を地面に着け、各足の記した3点と両足で合わせて6点で、立つ姿勢が最も良いと言われています。
 左右の足6点を使って立つと、立った姿勢で垂直位か若干の前方位です。垂直位から後方に身体の重心を移せば、身体を保つことができないために後方に倒れることとなります。
 もちろん私たちには、身体の平衡感覚を保つための反射があるので、重心が後方に移り倒れそうになれば、片足を後方に引いて倒れることを防ぎます。
 重心が前方に行けば、踵が浮いても親指と小指で倒れることを防ぎます。
 立位と同様に、歩行の際にも重心が後方となれば、支えることができずに倒れることとなるのです。
 この身体の重心が後方に有るにもかかわらず、訓練とか練習と言っていては困るのです。
 重心が後方となっている例では、背で物に寄りかかる・後方からの介助で歩いているようだが、実際には介助されている人に寄りかかっている・前方から手を引いて歩いているように見えるが、支えている手を離せば後方に倒れるなど、少し注意して観察すれば誰もが理解できる事です。
 後ろから介助することが悪いのではなく、前から介助することが悪いのではなく、立ったり歩く際の重心の位置が後ろなのか前なのかに拘るのです。
 歩行練習を行うのであれば、重心が後方にあってはいけないのです。
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 ここで使用する歩行器とは・・・
 歩行器=ここで使う歩行器は、通常から見れば特殊な歩行器です。
 ハンドル型で、押して使用します。
 前輪は何の抵抗も無い固定輪。
 後輪は、方向が自由に向くことのできるキャスターです。
 身体の重心を歩行器に頼ることはできない物です。
 クロコダイル(歩行器の一種)を使用すれば、同じ様な使い方が可能です。
 クロコダイルをPCWと同じように使用している時、後方の車輪の抵抗を外して自由に動くようにします。前輪は動きを抑制しているピンを外して、キャスター用の動きが可能とします。
 押し部の高さは、子どもの立位時の乳頭部とします。
 クロコダイルでも、良い歩行器として使用できます。

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 製作 LS-CC松葉杖訓練法 湯澤廣美